Concept

逍遥遊(しょうようゆう※)

あくまでも逍遥する。

何ものにも束縛されない自由の境地で、

尾道に滞在しリラックスしていただきたい。

脳の奥に眠る新たな宝物を見つけて欲しい。

そんな思いから、この場を創設しました。

新しいタイプのアーティストインレジデンス(※)

※逍遥遊とは中国の荘子の言葉でのびやかで気ままな状態を指します。

※アーティストインレジデンスとは、国内外からアーティストを一定期間招へいして、滞在中の活動を支援する事業のことです。

『フィールドトリップ』によって『旅の魔法が始まる場所』

”The magic of Exploration”

私達尾道アートビオトープは、あなたが前へ進むためのドアを開いてお待ちしております。

尾道アートビオトープの付近の港
尾道港

尾道という自然、歴史、景観、街、人々、文化。都市部では味わえない失われた豊かな時間。

あなたの内に潜む好奇心を魅力ある土地が触媒となり引き出し、化学変化を起こさせます。

そしてあなたが新たな一歩を踏み出し、表現を発展ささせるチャンスを提供します。

古い家々
尾道市には坂が多く風景が豊か

無意識の領域には沢山の表現の種が眠っています。

自分の内なる好奇心を呼び覚まし、彼らを宝探しのように見い出し、取り集めること。

それが表現活動を継続していく上で大変重要であることは近年、脳化学の研究によって解明されてきました。

しかし普段の生活では、脳の意識の大部分を占めるはずの無意識の領域を垣間見ようとしても、表層の意識に邪魔をされてしまいます。

そこで、生活空間とは離れたこの地、尾道で気ままなそぞろ歩きをしていただきたい。

魅力的な空間で逍遥して欲しい。

フィールドトリップすることが、表層意識を解きほぐし、無意識へアクセスするための有効な手段となるのです。

 

ですからビオトープで本格的な表現活動をすることは必要ありません!新しいタイプのアーティストインレジデンスなのです。

尾道アートビオトープから歩いてすぐの場所
瀬戸内海を照らす夕陽

「自然とアーチストの美しく幸ひな邂逅」 

「故郷は巡礼の出発地であり遍歴の帰着地である」 川端康成

「虚心坦懐」 先入観を持たず、無邪気で広く平らな心持ちで物事に臨む態度。

「逍遥」 気ままにぶらぶら歩くこと。そぞろ歩き。散歩。


 

瀬戶内の海はどうしてこんなに優しいのだろう。
さざ波が波止場に押し寄せることがあっても、潮騒すら立てずに、
ただ柔らかく微笑んで、わたしの心をいつも包んでくれるよう。

尾道の朝は、パトパトパト・・という向島への休むことなき連絡船
の音から始まる。
⻘緑の透明な水道と、対岸の旺盛な緑と、白い灯台。
晴天の⻘空の下、まるで蝸牛のように進んでいく数多の渡し船は、
同時に、この街の緩やかな時間の旋律となっていく。

額に風を受け、しまなみ海道から飛ぶ野鳥を見ていたら、
⻑らく染み付いた想いを、自然と切り放つことができた。
次から次へと新しく運ばれてくるシオを含んだ隔地の空気が、
さらさらと胸を洗う。

満月の日に臨んだ岸辺には、汀も其れ以上のない高さにまで嵩が
上がる。
一隻の舟が浮かぶ静まり返った明るい夜の闇に、
ただその光景を眺めていると、
文明とは異なる原始の世界に立ったような気持ちになる。

爽やかな香気を出づ檸檬のような色のまあるい月に照らされて、
わたしが今、生きていることを実感する。

鮎川 モフ  

※フリーライターとして活躍中。尾道アートビオトープでの滞在に寄せて。